水の放射能検査の方法は?検査で何がわかるの?
2011年の3月に起こったあの痛ましい震災は、多大な人的被害や経済的損失、歴史建造物への打撃をもたらしました。あれから6年がたとうとする今でも、その痛みや苦悩が消え去ることはありません。
そして同時に、あの震災は「放射能への不安」という悩みを残してもいきました。
このような不安を軽くするために、国を含め、さまざまな企業が「水の放射能検査」に力を入れています。そのやり方や意味についてみていきましょう。
水の放射能検査、そのやり方について
厚生労働省が出した指針では、水の放射能検査のやり方が細かく書かれています。それについて見ていきましょう。
1.まずは採取前の準備をする
採取前の準備として、飲み物の番号(ID)を割り振ります。またそこに、事業体名や採取地、浄水場名を記載します。いつ採取されたものなのか、誰がとったものなのかなどを細かく書いていきます。
2.洗う
瓶を洗います。このときに使うのは、試す水と同じものです。
3.水をとる
試験にとるときに使用する水の、2倍程度の水をとります
4.5日以内に検査をする
そのまま置いておくと品質が変化してしまうことがあります。もっとも理想的なのは、とったその日に検査をする方法ですが、それが難しい場合でも5日以内には行います。
また、このときは、水がどれほど濁っていたとしても、ろ過などはしません。この後、ゲルマニウム半導体検出器を利用して放射線量を図っていくことになります。
水の放射能検査で何がわかるの?
ではここからは、「水の放射能検査によっていったい何がわかるのか」について見ていきましょう。
福島県が実施した、水道水での水の放射能検査では以下のことが発表されています。
- ・放射性ヨウ素
- ・放射性セシウム
放射性ヨウ素は、チェルノブイリの事故でも話題になったものです。放射線ヨウ素は甲状腺のあたりに蓄積されていくため、大量の放射性ヨウ素をうけることにより、甲状腺がんのリスクがあがると言われています。
この影響はとくに子ども~若年層に大きいと言われています。大人の場合にも影響があるかもしれませんが、その根拠は明確ではありません。
ちなみにこのように危険視をされるヨウ素ですが、これ自体は、実は海藻などのも含まれています。食べ物に含まれている「ヨウ素」は「ヨード」という名称でも呼ばれ、成長や基礎代謝をすすめる効果があります。
また「放射線ヨウ素は体によくない」と悪者にされがちではありますが、実は放射線ヨウ素は甲状腺の機能を調査するための有力な方法となったり、甲状腺がんそのものの治療に使われたりもします。ヨウ素自体が危険因子であるというわけではなく、使い方によるのです。
次は「セシウム」について見ていきましょう。これは「放射性ヨウ素」と並んで語られるものであり、1960年代ごろからその存在が広く知られるようになりました。セシウムはとくに「土」との結びつきが深いものであり、非常に長い間残り続けます。
放射能を有し、内部被ばくに結びつくものとされており、牛肉などでもこのセシウムの入ったものが見られたことで大きな騒ぎになりました。
ただ上でも軽く触れましたが、どちらも「ほんのわずかでも摂取したら危険」かというとそうではありません。セシウムも安全な量ならば体外に排出されていくからです。
そのため原発事故が起こった後は、「水道水における安全な基準値」というものが国から発表されました。
それによると、放射性ヨウ素は300ベクレル/キログラム以下(乳児は100ベクレル/キログラム以下)、放射性セシウムは200ベクレル/キログラム以下となっています。
福島県では、平成24年の4月に、「水道水に含まれているセシウム量は、10ベクレル/キログラム以下にすることが目標である」と発表しています。ヨウ素については、セシウムほど残留期間が長くないため、目標値は発表されていません。
そして平成23年5月以降では、水道水には放射性セシウムおよび放射性ヨウ素が検出されていない、という結果になっています。
もっとも放射能というのは目に見えないものです。そのためその推移や影響がどれほどのものであるのか、これから先もずっと安全であり、決して健康被害が出ないと断言できるものであるのか、という点については、疑問をもっている人がいるのも事実です。
おわりに
あの痛ましい事故から6年が過ぎようとしている今も、放射能への恐れを抱く人は当然います。そしてその影響が、将来どのように出てくるのかについても、現段階では当然のことながら断言ができません。
ただ現在はあの事故が起きた福島県でも、放射性ヨウ素や放射性セシウムは水道水から検出されていません。これから先も注視していく必要はありますが、「放射能」に対しては、できるだけ冷静な視点で見ることが求められます。